
成長著しい中国の自動車産業は、ここ数年で技術力も飛躍的に向上しており日本、アメリカ、欧州メーカーとの差も確実に縮まってきています。
本記事では100社以上あるといわれている中国の自動車メーカーの中から一部を紹介します。
- 長安汽車(Changan Automobile)
- 奇瑞汽車(Chery Automobile)
- 東風汽車(Dongfeng)
- 第一汽車(FAW)
- 上海汽車(SAIC)
- 北京汽車 (BAIC)
- 華晨汽車(Brilliance Auto)
- 拜腾(BYTON)
- 広州汽車(GAC)
- 比亜迪汽車(BYD)
- 吉利汽車(GEELY)
- 長城汽車(Great wall)
- 正道集団(HYBRID KINETIC GROUP)
- 江淮汽車(JAC)
- 力帆汽車(LIFAN)
- 蔚来汽車(Next EV)
- 東南汽車(Soueast)
- Techrules(テックルールズ)
- 威馬汽車(Weltmeister)
- 小鵬汽車(Xiaopeng)
- 游侠汽車(Youxia)
- さいごに
長安汽車(Changan Automobile)

画像参照元:https://www.changan.com.cn/car/cs55plusblue/
長安汽車は兵器を製造していた国営企業の中国兵器集団が母体となって設立されました。当初は軍用車を製造していましたが、1980年代にスズキと提携したことをきっかけに乗用車市場に進出しました。現在では中国自動車メーカーの「ビッグ5」の内の1社となっています。
複数の海外自動車メーカーとも合弁事業で提携しており、フォードやマツダ、PSAと合弁事業を展開しています。
自主ブランド車も2005年から展開し、現在は北京や上海、重慶にR&Dセンターを、イタリアのトリノと新横浜にデザインセンターを置いており、グローバル市場を見据えた体制で開発を行なっています。
奇瑞汽車(Chery Automobile)

画像参照元:https://www.chery.cn/vehicles/tiggo8plus#page-2
奇瑞汽車の設立は1997年、安徽省の地方政府によって設立されました。最初はスペインの自動車メーカーであるセアト(フォルクスワーゲングループ傘下)・トレドのライセンス生産から事業を開始させ、独自車種を増やして成長を続けてきました。
一時期は自主ブランドを4つ展開していましたが、現在は「チェリー」のみに一本化しています。他には投資グループと共同出資で設立した凱翼汽車(COWIN)も別ブランドとして展開しています。
現在はジャガー・ランドローバーと提携を結んでおり、英国ブランド車の生産・販売もおこなっており、中国自動車メーカー「ビッグ5」の1社となっています。
東風汽車(Dongfeng)

画像参照元:http://www.dfpv.com.cn/d53-2020/
東風汽車は中国共産党政府が設立した自動車工場「第二汽車製造廠」がルーツとなっている国営企業で、中国自動車メーカー「ビッグ5」の1社です。多くの海外自動車メーカーと合弁事業を展開しており、プジョーやシトロエン、起亜、日産、ホンダ、台湾の裕隆などと提携を結んでいます。
提携メーカーから譲り受けたプラットフォームをベースに、自主ブランド車を多くラインナップしています。得意分野の大型トラックは中国国内シェアは首位を誇り、2013年にはボルボトラックと提携を結んでいます。
第一汽車(FAW)

画像参照元:http://www.faw.com/fawen/ppycp7968/passenger_cars/5258466/index.html
中国自動車メーカー「ビッグ5」の1社である第一汽車は、中国共産党政府が国有資産であるトラックを製造する目的で建設した自動車工場が始まりで、党幹部向けのモデル「紅旗」の製造を手がけていました。
1991年にはフォルクスワーゲン(Volkswagen)と提携して一般向け車両の生産を開始し、乗用車市場にも進出しています。トヨタやマツダとも合弁事業を展開しており、自主ブランド車のラインナップも充実させています。
上海汽車(SAIC)

画像参照元:https://www.saicmotor.com/chinese/xwzx/jcspjtp/index.shtml
1980年代、他社に先がけて海外メーカーと提携を結び、フォルクスワーゲン(Volkswagen)の生産を開始した上海汽車はその後、ゼネラルモーターズ(GM)とも提携を結び、キャデラックやビュイック、シボレーを国内で展開しました。
独自ブランドの「ROEWE(栄威)」も国内で成長を続けており、中国自動車メーカー「ビッグ5」の1社となっています。
北京汽車 (BAIC)

画像参照元:https://en.wikipedia.org/wiki/Senova_D50
元々は中国政府が設立した自動車部品会社が発展し、自動車メーカーの北京汽車となりました。グループ企業ではバスやトラックも製造しており、ヒュンダイやダイムラーとも合弁事業を展開しています。
北京ジープとして軍用車を生産するようになり成長を遂げた自動車メーカーですが、乗用車市場に本格参入したのは2010年以降で、現在は「紳宝」や「北京」といった自主ブランドを展開しています。
華晨汽車(Brilliance Auto)

画像参照元:https://www.zhinuo.com.cn/60H/index.html
1992年に創業された歴史の浅い自動車メーカーですが、潤沢な資金をもとに精力的な活動を展開して存在感を高め、「中華」「金杯」「閣瑞斯」という3つの自社ブランドを展開しています。
ほかにもBMWとの合弁事業を展開したり、EV専用ブランド「之諾」も立ち上げています。創業当初から自主ブランド車の展開に注力し、独自車種のラインナップを充実させており、現在は新興国の自動車メーカーにもライセンスを提供しています。
拜腾(BYTON)

画像参照元:https://www.byton.com/m-byte
拜腾(バイトン)は、コンセプトカーの発表とともにに前触れもなく2018年に躍り出てきたEVメーカーです。中国の南京地方政府からの資金をもとにBMW出身者らが2017年に設立した新興ベンチャー企業で、電動SUVのM-Byteを量産し、中国やアメリカ、欧州各国で販売を開始する予定でした。
しかし、資金調達がうまく進まず資金不足による経営危機で、2020年6月30日に中国での事業を一時的に停止しています。
現在はM-Byteの21年8月量産開始を目指して、事業の再構築をおこなっています。
広州汽車(GAC)

画像参照元:https://www.gacmotor.com/gs4coupe/#
自動車部品の製造とメンテナンス作業をおこなう企業として設立された広州汽車ですが、当初は提携したホンダとトヨタの車種のみを生産していました。その後、アルファロメオの生産設備を購入して自主ブランド車を生産・展開を開始しており、高品質なデザインを売りに市場での存在感も増しつつあります。
また吉奥汽車や長豊汽車といったメーカーも買収して規模拡大を図り、三菱やFCAとも提携しています。2018年には北米市場進出を発表するなどグローバル展開も積極的に推し進めています。
比亜迪汽車(BYD)
画像参照元:http://www.bydauto.com.cn/auto/carShow.html-param=%E6%B1%89EV
二次電池の大手メーカーだった比亜迪が自動車産業に進出したのは2003年。おもに他メーカーのコピー車をモデルラインナップし、低価格を武器に成長してきた自動車メーカーです。
近年では日本や欧州から優秀な人材を集めて、開発能力を強化しコピーメーカーからの脱却を目指しています。前身が電池メーカーであるという強みを活かしてEVの開発にも積極的で、比亜迪汽車の電動路線バスは日本のバス会社に納入された実績もあります。
吉利汽車(GEELY)

画像参照元:http://global.geely.com/car/xing-yue/
家電製品や二輪車を製造していた吉利汽車は1998年に自動車製造に進出しました。当初はコピー車しか作れませんでしたが、海外メーカーとの提携に頼らず独自で成長している自動車メーカーです。
2010年には親会社がボルボなどを買収して自主開発能力の底上げを図り、2017年にはロータスを傘下に納めたり、2019年にはダイムラーとの提携強化で次世代スマートを共同開発・販売と有人ドローン事業を目指すことを発表しています。
長城汽車(Great wall)

画像参照元:https://www.oraev.com/r1.html
1984年に本格的な自動車メーカーとして活動を開始した長城汽車は、当初からSUVとピックアップトラックに強みを持っており、長年にわたって中国国内販売台数のトップを守り続けています。
また海外展開も早くから推進しておりイランやロシアなど、複数の国に組立工場を設けています。2013年にはSUVブランドの「HAVAL」、2016年に中国初高級SUVブランド「WEY」、2018年にはEV専門ブランド「ORA」を立ち上げています。
正道集団(HYBRID KINETIC GROUP)

画像参照元:http://www.hkmotors.com/en/news/detail.aspx?id=185
モーターやバッテリーなどのEV用システムの開発を手がけるハイブリッド・キネティックグループ(正道集団)は香港の企業が母体となっているメーカーです。コンセプトカーを数台発表していますが、まだ販売はしていません。
2017年にはピニンファリーナと共同開発したレンジエクステンダーEVのコンセプトカーを3台、2018年にはHK GTを公開。そのほかセダンのH500とSUVのK350も発表しています。
将来的には12種類のレンジエクステンダーEVを展開し、効率的な内燃機関とマイクロタービン発電機、水素燃料電池を設定する計画があることでも話題となっています。
江淮汽車(JAC)

画像参照元:jac.com.cn/jacweb/iev/
1964年に安徽省(あんきしょう)政府が設立したメーカーで、トラックとバスの製造から事業をスタートさせました。グループ全体では部品メーカーや建設機械メーカーもあり、幅広い事業を展開しています。
乗用車市場に進出したのは2008年、商用車中心のラインナップから少しずつ小型・中型車の独自車種も増やしていきました。2016年に発売したコンパクトSUVの「iEV 6S」以降、電気自動車のラインナップも拡充しています。
イタリアのトリノと東京都の高円寺にデザイン拠点を設けています。
力帆汽車(LIFAN)

画像参照元:http://auto.lifan.com/show/820/
1992年にHONGDA(「ホンダ」と発音)と名乗るコピーバイクの生産をはじめ、やがてベトナムやラオスなど、海外にも大量輸出するようになり成長を遂げたメーカーです。
自動車メーカーとして知られるようになった現在でも二輪車の生産・販売を継続しており、汎用エンジンから大型トラックまで幅広い商品を手がけています。乗用車ラインナップもコピー頼ではありますが次第に充実させ、2014年には新しいR&Dセンターを開設して独自モデルの開発を推進させています。
蔚来汽車(Next EV)

画像参照元:https://www.nio.com/news/nio-sets-new-record-fastest-autonomous-car-world
2014年にEV車のフォーミュラーカーレース「フォーミュラーE」に参戦したり、2017年にはニオ(NIO)というブランドのスーパーEV「NIO EP9」でドイツのニュルブルクリンク北コースで世界最速タイムを記録したことで認知された新興EVメーカーです。
上海やアメリカ、イギリス、ドイツなどにも開発拠点を持ち、急ピッチで新型車の開発を進めており、2018年には3列シートの電動SUVモデルであるES8、2019年には弟分のES6を発売しまています。2020年7月にはクーペSUVのEC6を発表し、9月より生産を開始する予定です。
東南汽車(Soueast)

画像参照元:https://car.soueast-motor.com/DX7xy/#home
東南汽車はトラクターなどを製造していた福建省汽車工業集団が1995年に設立した自動車メーカーで、台湾の中華汽車と提携を結んで三菱車の生産をスタートさせました。2006年には本家の三菱自動車とも提携するようにり、現在でもラインナップの多くが三菱車をベースとしたものになっています。
2014年からはピニンファリーナが開発を手がけたSUV「DX」シリーズを展開し、人気車種となったことで少しずつ独自のイメージが打ち出せるようになってきています。
Techrules(テックルールズ)

画像参照元:https://techrules-news.com/#3375
テックルールズは2016年のジュネーブモーターショーでガスタービンハイブリッド技術を搭載したスーパースポーツカーを公開し、表舞台に躍り出たベンチャー企業です。
2017年に初の市販モデルとして公開したジウジアーロがデザインを手がけた電動スーパーカー「Ren」は、フロント2基、リア4基、合計6基のモーターを搭載するサーキット専用車です。2018年には今後2年以内に製造拠点を立ち上げ、生産を開始すると発表しています。
威馬汽車(Weltmeister)

画像参照元:http://www.wm-motor.com/ex5-z.html
威馬汽車は中国IT企業である百度(バイドゥ)」から巨額出資を得たことで、一気に知名度を高めた新興EVメーカーです。威馬は外部からの大型出資を得る前から、市販モデルの開発を地道に進めていました。
2018年9月には電動SUVモデルのEX5を発売、2019年11月にはEX6プラスを発表しています。さらに2020年4月にはEX5のマイナーチェンジモデルであるEX5-Zを発表しています。
小鵬汽車(Xiaopeng)

画像参照元:https://en.xiaopeng.com/p7.html
小鵬汽車は大手ECサイトのアリババや、スマートフォン大手のシャオミ、iPhone製造で知られるEMS大手のフォックスコンからの出資得て飛躍したEVスタートアップメーカーです。
自動運転技術の開発にはエヌビディアやクアルコムといった、欧州企業と積極的に提携している点もユニークで、品質管理部門のトップにトヨタ出身の日本人を起用したことも話題となりました。
2018年11月にXPENGというブランドでミッドサイズSUVのG3、2019年11月にはミドルラージセダンのP7を販売開始しています。
游侠汽車(Youxia)

上海のEVベンチャーである游侠汽車(遊侠汽車/Youxia)が2015年に後悔したEVモデル「游侠X」は、「テスラ・モデルS」にそっくりだと話題になりました。「游侠X」には3グレードが設定され、トップグレードの航続可能距離は460Km。プロトタイプでは車載インフォテインメントのシステムにKITT OSという名前をつけるなど、アメリカの影響を色濃く見せています。
2017年末に生産工場の建設もスタートさせましたが2020年10月現在、資金難によって建設を中断しています。
さいごに
本記事で紹介した中国の自動車メーカーは一部で、まだまだ中国国内には自動車メーカー存在しています。
中国政府は2035年に新車販売のすべてを電気自動車などの新エネルギー車やハイブリッド車にする方針を明らかにしており、ガソリンエンジン車が中国の自動車市場で販売できなくなる可能性が高いと言われています。
中国の自動車メーカーは世界的に知名度のある自動車メーカーから、スタートアップの新興メーカーまでさまざまですが、2035年に向けて今後も新しい自動車メーカーが誕生してくるのではないでしょうか。
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